[松井裕美]
今年度、パリ国際学園都市の日本館で多文化研究会(CEM)を担当する機会を頂き、2月8日の第1回CEMにおいて『身体の構築と定義』と題した日仏若手研究者による研究会を開催した。
アラン・コルバンらにより編纂された『身体の歴史』(藤原書店)をはじめとし、学問的な領野を越えて身体の歴史的・文化的・思想的構築に関する議論を交わす場の必要性から、近年、人文科学の分野で様々な辞典・アトラス・論文集が出版されている。これらの動向を踏まえ、第1回CEMでは䑓丸謙(パリ第10大学・ロンドン大学博士課程/EHESS日仏財団研究員)およびデルフィーヌ・ミュラール(フランス東洋文化研究所博士課程/フランス国立図書館研究員)の2人を共同企画者として、思想史・文学・歴史・社会学・美術史といった様々な諸人文科学の日仏若手研究者とともに、身体の構築と定義について学際的な場で議論する方法論的な地平を模索する会を企画した。60件ほど応募された要旨の査読の結果12人の発表による研究会が開催された(プログラム⇒http://blog.apahau.org/journee-detude-construction-et-definition-du-corps)。
学際的な研究会の開催には、多様な観点の研究における共通の関心を導き出すような、複数の主となる方法論的基盤と研究経験が必要とされるために、アーネット・ベッカー教授(パリ第10大学)、クレール・バルビヨン準教授(パリ第10大学)、エステル・レジェリー=ボエル準教授(フランス東洋文化研究所)の3名がComité scientifiqueとして査読・司会・運営と様々なかたちで携わってくださったことは私達開催者にとって何よりも心強い後ろ盾であった。また当日の司会と発表の双方をご担当されたベルナール・アンドリュー教授(ロレーヌ大学)は、Dictionnaire du corps(CNRS)を出版されたご経験から議論を常に活発な方向へと導いてくれた。
外国の地で分野や言語の壁を越えた対話の機会をつくりだすことは私にとってはじめての挑戦であり、手探りの模索のなかで、多くの方々の協力を得てはじめて成功した会であったように思う。この会が参加者の皆様にとって有意義な時間となったことを切に願うと同時に、ご協力下さった皆様に、企画者としてこの場を借りて心よりの謝意をお伝えしたい。会の具体的な成果は論集のかたちで出版する予定である。