2015年1月21日水曜日

パリ社会科学高等研究所(EHESS)三浦篤先生講演・セミナー報告

[松井裕美]

 2014年11月、パリ社会科学高等研究所(EHESS)にて、三浦篤先生による講演およびセミナーが開催された。2014年11月12日・13日・19日・20日の計4回にわたるこの企画は、EHESSの日仏財団により運営された。現地でのコーディネーターを務めさせていただいた経験から、会の報告をさせていただきたい。

 本講演会およびセミナーは、様々な学問分野の交流、さらには各分野において世界的に活躍する研究者と、若手の研究者の交流を促し、将来の新たなる研究の可能性を開拓するという日仏財団の理念に基づき企画されたものである。12日と20日の2日間は、EHESSにおいて、人類学や美学などさまざまな視点から美術を研究する2つの修士課程のセミナー、「新たなる人類のかたち:革命と保守主義のあいだで(19世紀―20世紀)」(エリック・ミショー教授)ならびに「芸術と流用:人類学的総括」(ブリジット・デルロン教授)において、三浦篤先生の授業が行われた。前者では1878年から1914年にパリに留学していた日本人画家について、後者では日本の美術に魅了されたフランスのアカデミスムの画家ラファエル・コランについての講義が行われた。13日には4人の博士課程の方々(土山陽子さん、レア・サン=レイモンド、デボラ・レヴィ、サビーヌ・パセデル)の発表と各々への三浦先生からのコメントを通して、フランスと日本の相互的な関係のなかで形成され発展するような文化を研究するにあたって心がけるべき方法論、観点を確認した。また19日には、「エクリチュールの人類学(Anthropologie de l'écriture)」をテーマに研究を展開しているベアトリス・フランケル教授をディスカッサントとして迎えながら、19世紀フランス絵画において認められるエクリチュールと日本美術との関係性に関する三浦先生の講演が行われた。



 これら一連の講義は、日本美術とフランス美術の関係性の美術史的研究を通して、日本の研究者とフランスの研究者、美術史研究と人類学や社会学、美学などの分野との交差する地点となるような機会を築く企画であったといえる。日本の研究者や学生がフランスで積極的に研究のプロジェクトに関り、また他分野の研究者との共同研究、共同企画の可能性を見出すことができるような時間と空間をつくりだす、そのような日仏財団の試みは、今後豊かな成果を日仏双方の知的分野にもたらすに違いない。その美術史の分野における最初の試みとして立ち上げられた本企画に快くご賛同して下さった三浦篤先生、また本企画の運営・構想を行ってくださった日仏財団所長セバスチアン・ルシュヴァリエ、財団のプロジェクト・マネージャーである臺丸謙さんに、この場を借りまして心よりお礼申し上げます。